昨年(2024年)11月にリリースされた Windows Server 2025 では、新しく「従量課金ライセンス(Pay as you go ライセンス)」が利用できるようになっています。これは Windows Server のライセンスを買い切り(リテール版、OEM 版、ボリュームライセンス版)で購入するのではなく、動作させた時間に応じて課金するというサブスクリプション型のライセンスになります。
従量課金ライセンスと買い切りライセンスの違い
従量課金ライセンスと買い切りライセンスの異なる点は以下の通りです。
機能としては Datacenter エディション相当ですが、従量課金ライセンスでは仮想化インスタンス実行権が無いのでそもそも Standard を使う意味がありません。また従量課金ライセンスの場合は、Azure 上の Windows Server と同様にサーバー CAL が不要になります。
買い切り | 従量課金 | |
エディション | Standard と Datacenter | Datacenter 相当 |
支払い | 購入時に一度だけ (SA は延長ごとに課金) | 稼働時間に応じた従量課金を Azure 料金として支払い |
課金基準 | 物理コア数により算出 最低16コアライセンス必要 | 物理コアごとの課金 *1 |
仮想化インスタンス実行権 | Standard は2インスタンス Datacenter は無制限 | なし |
Azure Hybrid 特典 | あり | なし |
サーバー CAL | 必要 | 不要 |
購入方法 | リテール / OEM / ボリュームライセンス | Azure Arc を通じたオンラインサインアップ |
ライセンス認証 | プロダクトキーによる KMS / MAK / Active Directory 認証 | Azure Arc による認証 |
*1:仮想化環境の場合、仮想マシンに割り当てられた仮想コア数に対応する物理コア数単位での課金となるようで、最低コア数の基準は無いようです。
従量課金ライセンスでのインストール
Windows Server 2025 の従量課金ライセンスを利用するには、インストール時に使用するライセンスの種類を選択し、最初に従量課金用の Azure サブスクリプションに接続する必要があります。他の方法(リテールライセンスやボリュームライセンス)でライセンス認証を行った場合、後から従量課金に切り替えることはできません。
また従量課金ライセンスの Windows Server は Azure Arc でライセンスと課金が管理されるため、Azure 側にオンプレミスのサーバーと対応する Azure Arc 対応サーバーのリソースが作成されます(Azure 側ではこのリソースが課金対象となります)。そのため、Azure Arc 対応サーバーのリソースを格納するリソース グループをあらかじめ用意する必要があります(既存のリソース グループも利用できますが、管理上新しいリソース グループを作成した方が良いでしょう)。
サーバーを Azure Arc に登録するには、サブスクリプション上に以下のリソース プロバイダーが登録されている必要があります。新しいサブスクリプションなどリソース プロバイダーが登録されていない場合は、事前に登録を行ってください。
Microsoft.HybridCompute
Microsoft.GuestConfiguration
Microsoft.HybridConnectivity
Microsoft.AzureArcDataリソース プロバイダーの登録方法は以下を参照してください。
・Connected Machine エージェントの前提条件 – Azure Arc | Microsoft Learn
・リソース プロバイダーとリソースの種類 – Azure Resource Manager | Microsoft Learn
Azure 側でリソース グループが用意できたら、オンプレミスで Windows Server 2025 のインストールを開始します。インストールには製品版のインストール メディアが必要です(現時点では評価版から従量課金への変更は行えません)。
インストール メディアでサーバーを起動してインストールを開始して進めると、以下の画面が表示されます。Windows Server 2025 のセットアップ ウィザードは以前のバージョンと比べて(Windows 11 のセットアップ ウィザードと同じような)新しい画面になっていますが、ここで [セットアップの以前のバージョン] を選択すると従量課金でのインストールに進めません。
次に以下の画面に進みます。ここで [Pay-as-you-go] を選択します。
次はインストールするエディションの選択ですが、前述のように従量課金では Standard と Datacenter の差が無いので、Datacenter を選択します。デスクトップ エクスペリエンスはあり/なしどちらでも構いません。
※デスクトップ エクスペリエンスなしの場合は後で行う Azure Arc への接続作業を PowerShell で実施します。
この後は通常通りセットアップを進めます。
従量課金の構成(Azure Arc との接続)
デスクトップ エクスペリエンスありの場合、インストール後の初回サインインで OOBE を行ってデスクトップに進むと、自動的にサーバー マネージャーが起動します。その際、以下のようにポップアップが表示されます。
Windows Server 2022 では「今すぐ Windows Admin Center を試す」でしたが、Windows Server 2025 では「今すぐ Windows Admin Center と Azure Arc を試す」になっています。ここで「または、Azure Arc をお試しください」の [セットアップの起動] をクリックして、Azure Arc への登録を開始します。
1. Azure Arc Setup が起動するので、画面の指示に従って進めます。
2. Azure Arc のインストール(実際には Azure Connected Machine エージェントのインストール)が完了すると、以下の画面になりますので、[構成] をクリックします。
3. Azure Arc 構成が表示されますので、画面の指示に従って進めます。
4. [Azure にサインイン] で、Azure に管理者権限のあるアカウントでサインインします。
※管理者権限はリソース グループに対する共同作成者または Azure Connected Machine のオンボード ロールが必要です
サインインが行えると、以下のようにサインインしたアカウントが表示されます。[次へ] で進みます。
5. 接続先のテナント、サブスクリプション、リソース グループ、Azure リージョン、ネットワーク接続を指定します。ネットワーク接続はプロキシ経由とすることもできます。プロキシの場合の構成について詳しくは以下を参照してください。
・Azure Connected Machine エージェントの管理 – Azure Arc | Microsoft Learn
6. インストール時に Pay-as-you-go ライセンスを選択している場合、ここで [従量課金制] を選択して [次へ] で進みます。
7. これでオンプレミス側の作業は終わりです。ウィザードを閉じます。
なお、この作業の実施後、ライセンス認証が完了するまで若干の時間がかかります。しばらく(10分~1時間)してからライセンス認証の状態を確認してください。以下のように [デジタル ライセンスによってライセンス認証されています] と表示されれば OK です。
また Azure Connected Machine Agent により、タスクバーの通知領域に Azure Arc のアイコンが表示されます。
このアイコンをクリックして、接続しているサブスクリプションやリソースグループを確認できます。
Azure Arc での管理
オンプレミス側の作業でサーバーを Azure Arc に接続すると、そのサーバー(Azure Arc 対応サーバー)は Azure ポータルから管理することができるようになります。
Azure ポータルの [Azure Arc] – [Azure Arc リソース] – [マシン] に、接続した従量課金ライセンスのサーバーが表示されます。
サーバー名をクリックして、サーバーの詳細を確認できます。
左側のナビゲーションで [Windows の管理] – [Windows Admin Center] にアクセスすると、オンプレミスのサーバーの Windows Admin Center を Azure ポータル上で表示することができます。
※初回は Admin Center のインストールが求められますが、Azure ポータルからの操作でインストールを行うことができます。
オンプレミスの Windows Admin Center と同様に、この画面からオンプレミスのサーバー上の PowerShell を起動したり、リモートデスクトップ接続をおこなったりできます。
またイベント ビューアーの表示やレジストリの編集も行えます。
この他、Azure Arc で管理する Azure 仮想マシンと同様に、Azure Monitor による監視やアラート、Azure Update Manager による更新プログラム管理も行えます。
従量課金ライセンスの料金
Windows Server 2025 従量課金ライセンスの料金は、以下のページに記載があるように CPU コア/月あたり USD$33.58、USD$0.046/時間です。1コアで1時間約7円($1 = \150 で換算)、1か月稼働で約 5,200円程度となります。
Windows Server 2025 ライセンス & 料金 | Microsoft
従量課金ライセンスのメリット
従量課金ライセンスの大きなメリットは、必要に応じて柔軟に Windows Server のインスタンスを作成できることです。
特に Windows Server Standard エディションの場合、物理サーバーのライセンスで実行可能な仮想化インスタンスは最大2つで、3つ目の運用インスタンスが必要になった場合、もう1つ物理サーバー用のライセンスを用意しなければなりません。
※物理サーバーが16コアなら16コアライセンス、24コアなら24コアライセンスが必要です。
これに対して従量課金ライセンスであれば、仮想マシンに割り当てるコア数に応じて、かつ仮想化インスタンスを稼働させている期間だけの従量課金で仮想化インスタンスを増やせるので、仮想化インスタンスの構築・運用が柔軟に行えます。
また Windows Server 以外のオペレーティングシステムでハイパーバイザーを利用して仮想化された Windows Server インスタンスを実行する場合も、必要な CPU リソースに見合った必要最小限のコストで、Windows Server ライセンスを取得できます。
※従来は仮想化インスタンスにも物理サーバーに見合った量のコア ライセンスが必要でした
さらに従量課金ライセンスの Windows Server 2025 へのアクセスには CAL が不要となるので、サーバー数に比してクライアント数の多い環境では CAL の費用が大きく削減できる場合があります。
まとめ
Windows Server 2025 の従量課金ライセンスは、Windows Server のライセンス形態に今までにない柔軟性をもたらします。また利用環境によっては大幅なライセンス コストの低減も可能です。
さらに従量課金ライセンスの Windows Server 2025 は、Azure Arc を通じて Azure 仮想マシンと同様の Azure サービスを利用した管理が行え、管理の負担・工数の削減も行えます。
これからの Windows Server ライセンス導入では、従量課金ライセンスの利用も選択肢として検討してください。
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