Microsoft 365(Exchange Online)のメール送信制限
法人向け Microsoft 365 サブスクリプションに含まれている Exchange Online のサービスは、組織の内外との電子メールの送受信が行える電子メール サーバーのサービスです。
Microsoft 365 サブスクリプションはクレジットカードの登録だけで簡単に開始できる便利さがありますが、その反面でクレジットカードの不正利用によって不正な契約を行い、Exchange Online をスパム送信のプラットフォームに使おうという悪意のあるユーザーが存在することは否めません。
また Exchange Online を含む Microsoft 365 のクラウド サービスは多くのテナントで共有されたクラウド インフラストラクチャーで実行されているので、一部のテナントやユーザーが大量にリソースを消費すると、他のテナントやユーザーのパフォーマンスに問題が生じる場合があります。
こうした問題を最小化するため、Exchange Online ではメールの送信制限が行われています。従来、この制限は「1 ユーザー 24 時間あたり 10,000受信者」「1 ユーザー 1 分あたり 30 通」という制限になっていました。
※ 参考情報:Exchange Online の制限 – Service Descriptions | Microsoft Learn
外部ユーザーへの送信制限(ユーザー単位)
これに追加する形で、「外部ユーザーへの送信は 1 ユーザー 24時間あたり 2,000受信者」という制限が行われるようになることがアナウンスされています。
※ Exchange Online to introduce External Recipient Rate Limit | Microsoft Community Hub
この制限は「1 ユーザー 24 時間あたり 10,000受信者」へのサブ制限となり、外部(組織外のメールアドレス)への送信は 24 時間につき 2,000 受信者に制限されますが、内部(組織内のメールアドレス)への送信は最大 10,000 受信者(10,000 受信者マイナス外部への送信の受信者数)まで可能です。
この制限は以下のスケジュールで適用されます。
テナントの種類 | 適用時期 |
---|---|
2025 年 10 月以降に作成されたテナント 試用版のテナント | 2025 年 10 月 |
既存のテナント | 2026 年 4 月以降順次適用 |
外部ユーザーへの送信制限(テナント単位)
さらに、テナント単位での外部ユーザーへの送信制限の実施もアナウンスされています。
※ Introducing Exchange Online Tenant Outbound Email Limits | Microsoft Community Hub
これは上記のユーザー単位の送信制限にさらに加重適用される制限で、テナント全体のすべてのユーザーからの外部への送信の総量を制限するものです。
テナントあたりの外部送信の上限は以下のように決められます。
・試用版テナント:5,000受信者
・試用版以外のテナント:以下の数式で計算
500 * (ライセンス数^0.7) + 9500
具体的には、以下のようにテナント内のライセンス数が増えると上限も増えますが、1 ユーザーあたりの上限は低下します。
ライセンス数 | 外部送信の受信者数上限 |
---|---|
1 | 10,000 |
2 | 10,312 |
10 | 12,006 |
25 | 14,259 |
100 | 22,059 |
1,000 | 72,446 |
10,000 | 324,979 |
100,000 | 1,590,639 |
この制限は以下のスケジュールで適用されます。
テナントの規模 | 適用開始日 |
---|---|
試用版・1ライセンス | すでに適用済み |
25 ライセンス以下 | 2025 年 4 月 3 日 |
200 ライセンス以下 | 2025年 4 月 10 日 |
500 ライセンス以下 | 2025年 4 月 17 日 |
すべてのテナント | 2025年 5 月 1日 |
影響を評価する
この制限の影響を評価できるよう、Exchange 管理センターで新しいレポートが利用できるようになっています。
Exchange 管理センターの [メール フロー] に「テナント送信の外部受信者」というレポートが追加されています。このレポートで現在テナントから組織外に送信されているメールの状況を確認することができます。

このレポートで、以下のように組織外への送信が制限を超えていないか確認できます(オレンジのグラフが 24 時間当たりの外部受信者数です)。

よくある質問
- 「受信者数」とは何ですか? メールの通数とは異なりますか?
受信者数とはメールの実際の送信先のアドレスの数です。例えば 1 通のメールで宛先の to フィールドに 1 アドレス、cc フィールドに 5 アドレス、bcc フィールドに 2 アドレスを設定して送信した場合、受信者数は 8 になります。 - 「外部受信者」とは何ですか?
テナントに登録されているドメイン(Microsoft 365 管理センターの [設定] – [ドメイン] で登録済みのドメイン)以外のドメインのメール アドレスのことです。 - 外部受信者のカウントはアカウントごとですか?
いいえ、同じアカウントに複数のメールを送信する場合、その 1 通ずつカウントされます。例えば同じ外部アカウントに 500 通送信したら、500 受信者としてカウントされます。 - 「24 時間あたり」とは暦日単位でしょうか?
いいえ、24 時間のスライディング ウィンドウが適用されます。以下の図を参照してください。
- 外部へのメールの大量送信を行いたい場合はどうすれば良いですか?
Microsoft のサービスであれば Azure Communication Services メールが利用できます。
※ Azure Communication Services メールの概要 – An Azure Communication Services concept article | Microsoft Learn
またバルク メール送信が可能なサードパーティのサービスもあります。
まとめ
コンシューマー顧客へのダイレクト メールなどの大量メール送信を行っている組織以外でこの制限の影響を受けるケースは少ないと思われますが、早めに Exchange 管理センターでレポートを確認し、影響を受けないことを確認されることをお勧めします。
もし影響を受ける可能性がある場合は、制限の適用(特にテナント単位の制限の適用)は間近です。早期に対応を検討してください。
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