SharePoint Server サブスクリプション エディションへの移行

この記事は約8分で読めます。

SharePoint Server のライフサイクル

Microsoft 365 で SharePoint Online が手軽に利用できるようになったため、オンプレミスの SharePoint Server から SharePoint Online に移行された組織は少なくないでしょう。また新規にオンプレミスの SharePoint Server を構築するケースは少なくなっていると思います。
とは言え、さまざまな理由、例えば保存するデータの機密性、サイトへのカスタマイズ、独自のワークフロー実装などのために、オンプレミスで SharePoint Server を利用したいというニーズもあります。

そのような場合に気になるのが、「今使っている SharePoint Server はいつまでサポートされるのか」というライフサイクルの問題でしょう。
現在 Microsoft によるサポート(セキュリティ更新プログラムやテクニカル サポートの提供)が継続している SharePoint Server のバージョンは 2016 と 2019 ですが、この両方とも 2026 年 7 月 14 日でサポートが終了します。つまりサポート終了まであと 1 年と 4 か月(2025 年 3 月時点)となっているのです。

サポートが終了すればセキュリティ更新プログラムは提供されなくなりますし、そもそも脆弱性についての情報自体が提供されなくなります。セキュリティやコンプライアンスの理由でオンプレミスの SharePoint Server を選択しているのであれば、これは許容できないリスクである場合がほとんどでしょう。
そのため、サポートされているバージョンへの更新またはクラウド(SharePoint Online)移行が必要となります。

SharePoint Server サブスクリプション エディション

サブスクリプション エディションとサポート ライフサイクル

SharePoint Server 2019 の後継製品として、2021 年 11 月に SharePoint Server サブスクリプション エディションが登場しています。2026 年 7 月以降もオンプレミスで SharePoint Server を利用する場合、この SharePoint Server サブスクリプション エディションに更新する必要があります。
 ・SharePoint Server サブスクリプション エディションの新機能と強化された機能 – SharePoint Server | Microsoft Learn
ただしこの製品は「SharePoint Server 2021」や「SharePoint Server 2024」ではなく「サブスクリプション エディション」です。これは次のことを意味しています。

SharePoint Server サブスクリプション エディションはモダン ライフサイクルの製品です。
モダン ライフサイクルとは、現行の Windows や Microsoft 365 Apps のように、あらかじめ決められたサポート期限が無い代わりに、常に最新の状態に更新することでサポート対象となるというものです。
 ・Modern Lifecycle ポリシー – Microsoft Lifecycle | Microsoft Learn

SharePoint Server サブスクリプション エディションでは Windows と同様に、1 か月に 1 回第 2 火曜日(米国時間)に累積更新プログラムが提供されています。この更新プログラムのリリース日から 1 年間がサポート期限となります。つまり少なくとも 1 年に 1 回は更新プログラムを適用しないと、サポートされなくなるということです。

サブスクリプション エディションの機能更新プログラム

さらに(Windows と同じように)機能更新プログラムも提供されます。機能更新プログラムは通常の更新(セキュリティ対策と不具合や安定性の修正)と異なり、SharePoint Server 自体の機能に変更を加えるものです。
サブスクリプション エディションの機能更新プログラムは(Windows と異なり)単独で提供されるものではなく、月例の累積更新プログラムに含まれる形で提供されます。例えば最新の機能更新プログラムである 24H2 の更新プログラムは 2024 年 9 月の累積更新プログラムに含まれる形で提供されました。これ以降の更新も累積更新ですからすべて 24H2 の機能更新を含んでいます。
 ・SharePoint Server サブスクリプション エディションのセキュリティ更新プログラムの説明: 2024 年 9 月 10 日 (KB5002640) – Microsoft サポート
これは(Windows の機能更新とは異なり)機能更新プログラムの適用をスキップして、セキュリティ更新だけを受け取ることができないことを意味しています。先ほどのサポート期間で説明したように、サポートを継続するには少なくとも 1 年に 1 回は累積更新プログラムを適用する必要がありますので、少なくとも 1 年に 1 回は機能更新も適用する必要があるということになります。

まとめると、SharePoint Server サブスクリプション エディションを利用する場合、従来の SharePoint Server のように固定されたバージョンと機能のままでサポート終了まで利用することはできず、少なくとも 1 年に 1 回は機能更新プログラムによるバージョンアップ(機能の変更)を行う必要があるということになります。

オンプレミスの SharePoint Server ではサイトへのカスタマイズ・独自のワークフロー実装・サードパーティー製のモジュールの追加などを行っている場合が少なくないと思われますが、これらは SharePoint Server 側の機能変更の影響を受けやすいので、機能更新プログラムの適用前にテスト環境などで十分な検証を行う必要があるでしょう。そのためこの機能更新プログラムの検証と適用を毎年行うサイクルを確立する必要があります。
このことは、SharePoint Server サブスクリプション エディションでは今までの SharePoint Server で取っていたのとは異なる運用・保守の体制を作らなければならないことを意味しています。

こうした理由で、SharePoint Server 2016 や 2019 から SharePoint Server サブスクリプション エディションに移行するのは、今までの SharePoint Server のバージョンアップ以上に十分な準備と体制作りが必要となっています。

機能の変更点

SharePoint Server サブスクリプション エディションでは従来のバージョンに比べてさまざまな機能の強化が行われています。一方で廃止や非推奨とされた機能もあります。代表的な変更点を以下にまとめています。

強化された機能

  • Windows Server 2022・Windows Server 2025 のサポート(Windows Server 2019 もサポートされています)
  • Server Core インストールのサポート(従来はデスクトップ エクスペリエンスが必須でした)
  • N-2 アップグレードのサポート(SharePoint Server 2016 と SharePoint Server 2019 からのアップグレードが可能です。従来は N-1 アップグレードのサポートでした)
  • OpenID Connect (OIDC) 1.0 のサポート
  • TLS 1.3 のサポート
  • TLS 経由で改善された統合 Windows 認証

廃止・非推奨の機能

  • Access Services は廃止されました(以前のバージョンでは非推奨)
  • 基本認証は廃止予定です(2026 年 7 月 14 日まで利用可能、以降は削除されます)
  • InfoPath Forms Services は廃止予定です(2026 年 7 月 14 日まで利用可能、以降は削除されます)
  • Internet Explorer 11 によるサイト利用はサポートされません(SharePoint サーバーの全体管理サイトでのみサポートされます)

その他の機能の変更については、以下を参照してください。

まとめ

現在オンプレミスの SharePoint Server を利用している場合、サポート終了までにクラウド(SharePoint Online)移行するか、SharePoint Server サブスクリプション エディションへの更新を行う必要があります。この記事では SharePoint Server サブスクリプション エディションに移行する場合の前提として、SharePoint Server サブスクリプション エディションのサポート ライフサイクル(モダン ライフサイクル)とその意味について解説しました。

SharePoint Server サブスクリプション エディションでは従来のバージョンから変更となっている機能も少なくないので、更新には十分な検証と準備が必要です。また更新後も機能更新プログラムの継続的な適用のための体制を整えておく必要があります。オンプレミスの SharePoint Server を利用している組織は、移行の検討・検証を進められることをお勧めします。

この記事を書いた人

MurachiAkira
タイトルとURLをコピーしました